放蕩娘日記

人生が辛い倫理オタクのブログ

拝啓、ワタナベ君

たとえば、村上春樹の主人公が緑の見える部屋でツナのスピナッチ・ラップを女の子に作らせている時に私はドラッグ・ストアの横で蒟蒻粉のクッキーを齧っているんだ。私の過ごす時間は詩的ではない。貧乏暇なしなのだ。

 

イノセント・ワールドのドレスを纏っても、パルファージュの紗で乳を覆っても、ちっとも高貴になれやしない。ともかく卑しい星の下に生まれてしまった。大学生の頃ソフィアジャージを着てメンストに胡座をかいてバナナを貪っていた頃の臭気が、どうにも抜けきらない。

 

 

人は私を「にゃんにゃんOL」と呼ぶ。蔑称として。カワイイ制服、機能性のないピンヒール、くるんくるんに巻かれた髪。本当は君を愉しませるために身を調えたかった。神を失くしたソドムとゴモラの民のように、私は今彷徨っている。

 

私にはかつて永沢さんがいて、レイコさんがいて、そしてワタナベくんがいた。私は直子のように死ねなかったから、半端者として人生の続きという蛇足を書き連ねなければならない。ワタナベくん、あなたは今、幸せですか?