百年戦争
両親は留学先のイギリスで恋に落ち、夫婦となった。母はイギリス領で生まれ育ち、名誉イギリス市民として生きた。朝食にはスコーンが出され、バーバリーの上着が供され、クリスマスにはミートローフを食べていた。母校はアメリカ改革派教会がたてた学校であったので、アメリカ人の英語教師が多く、母校式の英語の発音についていつも母親にグチグチと言われていた。
私はどちらかというと、フランスの方が心惹かれていたから、両親と感覚が合わなかったのかもしれない。
小学生の頃、スタンダール『赤と黒』を読んで、神学校に興味を持ったし、大好きな太宰治は仏文科卒だし、大学時代は遠藤周作やマルグリット・デュラスやサガンにハマっていた。ハリーポッターは読んだことがないくせして、サルトルやパスカルは読み込んでいた。
一方、祖父母はアメリカ派の人だ。祖父の勤務先はアメリカの大学であったし、祖母はそれについて行ったせいで耄碌した今もオレゴンのさくらんぼの話やCLINIQUEの話をする。
祖父が出版した本では、アメリカ文化を礼賛するような言葉が沢山あった。戦後まもなく、八丈島から出てすぐにアメリカを見たらそうなるだろうな。
私の膝元はどこだろう。先日、妹から「我々の居場所は日本には無い」と電話がかかってきた。では、私はどこに立って生きていけばいいんだろうか。
明確に自分のバックグラウンドとなる「地元」や「田舎」を持つ宮崎が、私には輝いて見える。