放蕩娘日記

人生が辛い倫理オタクのブログ

あっくん

蝉の声を聞く頃になると思い出すのは楡周平の『蝉しぐれ』とそれを読んでいた敦くんのことだ。

敦くんは小学四年生の時のクラスメイトで、本と歴史が好きで歴史少年と呼ばれていた。その頃、司馬遼太郎の『燃えよ剣』や『人斬り以蔵』を読んでいた私は彼と意気投合して、よく話をしていた。

 

彼はサピオセクシャルの気があった。順位表に乗っている私の名前を見て私のことを気に入っていたらしい。

 

敦くんの第1志望校は私の第1志望校の隣駅にある男子校だった。彼がもし中学受験に失敗していなければ、電車の中で会ったり、そこで歴史の話ができたりしたのかな、と考えると淋しくなる。

 

彼に失望される前に、離れられてよかったと今では思う。私は早熟なだけで、頭が良くはなかったから、彼の期待に答え続けることはできなかったはずだ。

 

でも、彼と一緒に図書館で本を読んでいた穏やかな時間は、少女時代の大切な思い出の一つとして心の箱庭にしまってある。