「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」
ジャン・コクトーの一行詩の堀口大學訳であるこの一節が、私はとっても好きだ。
兄から誕生日祝いに真珠のピアスをもらった。真珠そのものも好きなので嬉しかったが、何より私が海を好きな事を憶えていてくれたことが嬉しかった。
海が好き。東洋の真珠と呼ばれる島で生まれたから、私は人魚姫なのかもしれない。泳ぐのが得意だし、揺れる水面を見ていると落ち着く。
高校時代、相原の英語の授業に意味を見いだせず、授業をサボって港の見える丘公園に何度も行って、ただ海を眺めていた。
「みなとみらい」という地名だけでなんだかワクワクしたし、海浜公園で出雲行きの船を見送りながら、初めて男の人に告白した。
マリンタワーから見える母校が好きだった。
前働いていた会社の窓からは、海が見えて、それだけが救いだった。
海が好きだったから、横浜が好きだった。
中野には海がないから、苦しいのかもしれない。